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2020年に使うHP 200LX

Date.
2020-11-18
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1994年に発売されたMS-DOS 5.0搭載PIM端末である、HP 200LXを2020年に使おうとするとどうなるかという実験です。このテキストも200LX上で書くという縛りがあります。

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200LXは初代である95LXから数えて3世代め、このシリーズでは最後となった製品です。製品末期にはHPが異例の生産終了のお知らせを出し、ユーザーサイドからはそれを撤回するよう求める嘆願活動が活発に行われるなど、コミュニティ活動が盛んだったPDA文化の中でも非常に大きな盛り上がりを見せた端末でありました。

Intel 80C186 8MHzに(当機は)2MB RAMを搭載しており、640x200pxのCGA互換モノクロ液晶を持っています。非常にプアな環境です。それでも非常に愛されたのは、その軽量さとキーボードの扱いやすさだと個人的には思います。筆者は1991年の95LXから使いはじめ、200LXは2007年くらいまで使ったと記憶しています。今回、本稿を執筆するにあたって200LXを新たに買っていますが、元の200LXもまだ持っています。

この端末は日本で非常に多く売れ趨勢を誇ったものではありますが、HPが販売している時点ではいっさいの日本語化はされておらず、コミュニティサイド(サードパーティ)で作られた日本語化キットを使って自分で日本語化する必要がありました。本稿では以下のソフトウェアだけは残っていたバックアップを使っています。

  • JUSTSYSTEM ATOK8 R.2 for DOS/V
  • Village Center Vz Editor 1.6

日本語入力FEPとテキストエディタですね。どちらも代替できるフリーウェアがあるかと思いますので、適宜読み変えてください。それ以外に関しては、2020年現在でインターネット上から入手できるソフトウェアだけを使って日本語環境を作っていきたいと思います。

2020年のLX日本語化事情

日本語化のためにはPCMCIAスロットに入れるフラッシュメモリカードが必要です。現在比較的容易に入手可能なのはコンパクトフラッシュ(CF)かmicroSDカードだと思いますが、多くとも1GB程度までしか認識できず、容量が大きいほどファイルシステムのオーバーヘッドが大きくなるので快適度が下がります。現実的なのは256MB程度までのCFだと思います。これくらいだとオーバーヘッドの待ち時間もそれほど気になりません。CFやmicroSDはPCMCIA変換アダプタ(やCF変換アダプタなど)が必要ですが、これはまだ(ギリギリ) Amazonなどで入手可能です。筆者はSanDisk CF 256MBを使っています。

CFはFAT16でフォーマットすれば使えます。本体ではAドライブにマウントされます。起動ファイル(config.sysとautoexec.bat)はA→C→Dドライブの優先度で読まれるので、CFに置いておけば起動時に最優先で読まれます。

日本語化のためには、JKIT Freeを使います。これは 2020年現在でも以下からダウンロード可能です。

JKIT FreeをPCでダウンロードしてCFのルートに解凍します。最低限の起動ファイル設定も入っているので、これを挿して再起動すれば日本語表示はできるようになります。システムマネージャを日本語化して起動するコマンドは sm です。

起動時にEMSメモリ関係のエラーが表示されると思うのですが、これはCドライブに仮想EMS領域を作っていないからです。この問題を解決するには、ctrl-alt-delで再起動後すぐに(メッセージが表示されている間に) altキーを押して、4を押して起動させます。その後、DOSが起動したら a:¥jkit¥emsinst.exe 48 などと実行し、EMS領域を48ページくらい作っておくとよいでしょう。終わったら通常の再起動で大丈夫です。

ATOK8はFDでインストールしないとならないのですが、物理ドライブを用意するかイメージ化したものを使うなどで、VMware上でインストールするなどしてファイルを抽出します。このインストールされたATOK8フォルダをCFのルートに置きます。そして、config.sysを以下のようにします。

files=20
buffers=20
shell=d:\dos\command.com /p /e:512
device=a:\jkit\lxjex.sys
device=a:\jkit\lxemm.exe
devicehigh=a:\jkit\lxfont.exe -fa:\jkit\lxfont.ini
devicehigh=a:\jkit\lxdspd.exe -fa:\jkit\lxdspd.ini
devicehigh=a:\jkit\lxansi.exe
devicehigh=a:\jkit\lxkkc.sys
DEVICEHIGH=A:\ATOK8\ATOK8A.SYS /UCF=A:\ATOK8\ATOK8.UCF
DEVICEHIGH=A:\ATOK8\ATOK8B.SYS
DEVICEHIGH=A:\ATOK8\ATOK8EX.SYS

これでCFを端末に挿してctrl-alt-delで再起動させれば、今度はATOKが組み込まれた状態で起動します。ただ、このままではキー操作で日本語入力を切り替えることができないので、a:¥atok8¥atut.exe を実行してキーカスタマイズから 日本語入力ON/OFF を探し、alt-space などに割り当てるとよいでしょう。

ATOKをそのまま使うと、BEEP音のコードの違いで入力ミスなどをしたときに容易にハングアップしてしまいます。これを防ぐために以下のパッチをあてます。

atok8fix.exe というツールがあって、こちらをconfig.sysで組み込むほうがよいのですがインターネット上からは消えてしまっています。残念です。ソフトバンク刊行『HP 100LX/200LX BIBLE』の付録フロッピーディスクに収録されているようなので、入手したい場合はオークションなどで。

システムマネージャ上で日本語を入力するためには、a:¥sm.bat を以下のようにします。

@echo off
a:\jkit\lxime
a:\jkit\fepio.com
a:\jkit\lxdsps -k+
100
a:\jkit\lxdsps -r
a:\jkit\fepio.com -r
a:\jkit\lxime -r

これでMemoやAppointmentsなどのアプリでも日本語が入力できるようになりました。

a:¥autoexec.bat を以下のようにしておくと、再起動時に自動的に日本語環境のシステムマネージャが立ち上がるようにできます。

@echo off
prompt $p$g
path c:\;d:\;d:\bin;d:\dos;a:\;a:\jkit;a:\dos
c:
rem a:\jkit\fepio.com
d:\dos\mode con rate=24 delay=3
assign e:=a:
d:\bin\cic100 /gen 1
call a:\sm.bat

日本語環境では少ないメモリを取り合うので、Vz Editorなどが起動できないかもしれません。これは、システムマネージャから Setup を起動してF5キーでSystem設定画面を開き、[Advanced...] ボタンで詳細設定を開いて DOS の部分に 128 などと入力しておくとよいです。

また、maxdos というツールを入れるとDOS環境に入った際にシステムマネージャをスワップアウトしてメモリ領域を最大限使えるようにできます。

上記を適当な場所に置いて、maxdos コマンドで起動するとシステムマネージャがスワップアウトされます。抜けるには exit コマンドです。

2020年の電源環境

Panasonicのeneloop Proが2,500mAhと大容量で、過去のニッケル(Ni-MH)電池の倍くらい保ちます。Setup の Battery (F9)で、バッテリー種別を Nickel Cadmium にしておく必要があります。

また、12V/2AでセンターマイナスのACアダプタを用意してあげると、同じ場所の設定で本体内で充電できるようになります。

ただし、容量の大きい電池を入れた場合にNickel Cadmium設定にしておくとlow batteryを検出してしまい、全体的な動作としてうまくいかないことがありました。この場合は、Alkaline設定に戻してやるとlow batteryのエラーが出なくなりました。low batteryでも即座にシャットダウンされるわけではなく、escキーを押すことで続けて使うことはできますが、Ni-Cd電池とは電流周りの事情が異なるので留意して使う必要があるっぽいです。

スマホとの連携

テキストファイルや本体のクリップボードに入れたデータをQRコードにして表示してくれる、MQどす というツールがあって、これを使うと入力したテキストを楽にスマホへ持っていくことができます。

以下のようなバッチファイルを qr.bat というファイル名で作っておくと、qr hoge.txt などと入力すればhoge.txtをQR表示してくれます。

@echo off
mqdos /IF%1 /OC /R

あまり大きなファイルを入力すると処理に時間がかかりすぎてしまうので、それなりに短いファイルの際に活用するとよいでしょう。

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